キジトラ速報

「加害者家族」という立場。一つの事件から少しでも悲しみを減らすことは出来るのか。
2014/12/20 20:02  コメント (5)
  • follow us in feedly

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

  • 加害者家族、という立場からニュースで流れる事件を見たことがある人はどのくらいいるでしょうか。もちろん一般に同情される側は被害者家族ですが、しかし、それとはまた別個の問題として加害者家族の権利についても考える必要がありそうです。



     

    殺人など刑事事件で容疑者や被告となった加害者側の家族らを支援しているNPO法人「ワールド オープン ハート」(仙台市)に対し、相談者の約9割が「自殺を考える」と話していたことが17日、分かった。誹謗中傷で転居や進学断念を余儀なくされたケースも多く、殺人事件では相談者全員が転居していた。

     長崎県佐世保市の高1女子生徒殺害事件で、殺人容疑で逮捕された少女の父親が自殺したケースもあるが、法人理事長の阿部恭子さん(37)は「死んで償ってはいけない。被害者への償いや加害者の更生のため、加害者の家族が日常生活を取り戻せるよう、サポートが必要だ」と訴えている。

    via: 殺人事件などの加害者家族の実情 9割が「自殺を考える」 – ライブドアニュース

     

    加害者家族とは

    毎日のように痛ましい残酷な事件が起きています。人が死ぬのも日常、性的暴力や強盗なども当たり前です。そんな社会でニュースを見ていると、多くの興味が集まるのは「事件の詳細」「被害者家族の無念」といったものです。それに対して、加害者家族に対しては概して冷たい目線を向けられることが多いでしょう。

     

    特に犯行が未成年だった場合はその傾向に拍車がかかり、家族に対して極めて暴力的な視線が向けられるのは確かなことでしょう。とりわけネットでその「ゆがんだ正義観」があらわになっているように思います。

     

    加害者家族の中には、まるでその犯行を知らなかった場合もあれば、薄々気づいてはいるけれども信じたくなかった、というケースが多いようです。中には捕まって裁判にかけられている間も、情報漏洩を防ぐために「何も聞かされず、夫がどんな犯罪を行って捕まったのかもわからないまま」でいるケースもあるようです。

     

    加害者家族の苦悩

    さて、ここでまず紹介しておきたいのがこの本です。「加害者家族」とまさにストレートなタイトルですが、鈴木伸元記者による粘り強い、そして長い期間を経た取材によって書かれた本です。「加害者家族」になった瞬間から、どんな風に世界が変わってしまうのかが痛ましいほどによくわかるものでした。

     

    417kSGTDB L. SL160  「加害者家族」という立場。一つの事件から少しでも悲しみを減らすことは出来るのか。
    幻冬舎 (2012-09-12)
    売り上げランキング: 10,108

     

    取り上げられたケースは「連続幼女誘拐殺人事件」や「神戸連続児童殺傷事件」「和歌山毒物カレー事件」「長崎男児誘拐殺人事件」「地下鉄サリン事件」などなどニュースを大変賑わせたものが並んでいます。中には冤罪や交通事故、鳥インフルエンザなどのケースも取り上げられていました。

     

    加害者家族の一例

     加害者家族になった時から、状況はどのように変わるのでしょうか。一例を取り上げてみましょう。夫婦と小学校三年生の男の子という家族を想像してください。

     

    ある日、夫がなかなか帰ってきませんでした。普段通りの生活を送っていたら帰ってくる時間なのに、と思っていると電話がかかってきます。警察からです。現在取り調べを行っていますとだけ伝えられます。事件の詳細は情報の漏洩を防ぐために知らされません。

     

    するとまた電話がかかってきて、「夫を逮捕すること、しばらく取材が殺到するだろうから隠れておいたほうがいいこと」を伝えられます。どんなことになるのか不安でいっぱいでしたが子どもを連れて一旦ホテルを借りてそちらに移動します。

     

    ニュースは怖くて見ることが出来ませんでした。深夜に一度荷物を取りに行こうと戻ると、そこには多くの車と記者たちが待ち構えていました。車で移動していたので、何気ない振りをしてそこを通り過ぎたものの、心臓が高鳴り気分が悪くなったそうです。

     

    子どもには「急な用事でしばらく帰ってこれない」と言っていたそうです。子どもがいないうちにニュースをみると名前が報道されていましたが、詳しい状況はまだわかっていないようでした。しかしそれからもずっと夫とは連絡が取れないままでした。

     

    ネットを見てみると掲示板が出来ていて、そこで様々な情報が書かれていました。嘘も多かったものの、中には家の住所や電話番号、子どもの学校などが明らかにされていたと言います。壁に「人殺しは出て行け」と書かれた写真が載せられて「神」と褒められているユーザーもいたようで、大変な衝撃だったと言います。

     

    その上、結局面会できるようになった数ヶ月後まで、彼女はほとんど何もわからず放って置かれたのです。「人殺しの息子」となるのが怖くて離婚をして苗字を変え、更に二度の転校を行いました。警察には、「あなたは大変なんて言ってはいけない。被害者家族のことを考えろ」と言われてしまったと言います。

     

    転校に伴う引越しの費用は誰が払ってくれるわけでもありません。一家の大黒柱であった夫は塀の中にいます。暮し向きは決して良いとは言えません。今もその事件の関係者だと知られるのが恐ろしくて、人との関係も極端に減らしているようです。子どものサッカーシューズを買うのも難しい状態、どれほどの精神的負担が子どもにかかっているのかもわかりません。

     

    加害者家族を考える

    先ほどの本には、このようなケースが山のように紹介されていました。激変する生活やストレスによって自殺を図る人も少なくありません。何より怖いのは「世間の目」であるとこの本では何度も強調されています。また「ネットの暴走」も指摘されており、今後の在り方には要注意でしょう。

     

    確かに残虐な事件であればあるほど、人殺しや誘拐などの言葉を聞くと、加害者家族に責任を持たせたくなる気持ちはよくわかります。とりわけ15歳くらいの子どもの犯行だと、「兆候を見て取れなかったのか、なんとかできなかったのか」と思ってしまいます。それは確かな感情でしょう。

     

    しかしながら、その気持ちを「暴力的に表現する」ことに正当性はありません。犯人の顔写真もそうですが、家族の状況や住所電話番号といった個人情報を載せることが許されてはならないでしょう。その情報だけで、その人の人生を「破壊」することができるからです。

     

    これは罰だ、と考える人がいるかもしれませんが、罰を与えるのは「個人や世間」ではなく「司法」です。そのためにこそ司法は存在しているのですから。自殺にまで追い込む「正義」に正しさはあるのでしょうか。

     

    まとめ

    一般に日本では被害者家族への配慮、といった観点も大きく欠けていると言われてきました。最近ではやっとそれの批判による変化が生まれているようですが、日本ではまだまだ発達しているとは言い難い状態です。

     

    それに比べると、加害者家族に対するケアは最早ほとんど0と言っていいでしょう。イギリスなどでは加害者家族の集まりによるケアや悩み相談、子どもの遊び場を作るなど「社会との接点を少しでも作る」ことを目的とした団体が多数あるようです。

     

    とりわけ素晴らしいシステムだと思われるのが、事件が確定した時点で速やかに加害者家族に対してこういった加害者家族支援団体の存在を知らせるものです。これによって具体的な裁判の時の対応、家を変える時の方法、といった具体的で現実的な情報を教えてくれるのです。

     

    しかし今もなお、「加害者家族は苦しいと、助けて欲しいと言ってはならない。被害者家族のことを考えろ」という価値観が存在していることは疑いようもありません。しかしこの本を読みいくつかのケースを見てみると、本当に痛ましく壮絶な「加害者家族」の生活が見えます。

     

    一つの事件から生まれる被害者は、決して被害者とその家族だけとは限りません。加害者家族もまた社会とのつながりを失い、執拗で強烈な暴力を受け続け、死を選ぶことがあるのです。一つの事件から生まれる悲しみは少ないほうがいい、そうは思いませんか?

     

    関連記事



    カテゴリー 社会 芦山悠太

    関連記事
    コメント一覧
    1. ぽヌール
      2014年12月20日20:23  ID: NTE1MjgwN

      自分の住んでた隣の市で少年による殺人事件が起きた。
      加害者家族への取材は苛烈で、母親は自殺。同居してるわけでもない親戚の女性も自殺に追い込まれた。
      メディアに正義などない。

    2. キジトラさん
      2014年12月20日21:19  ID: NjEzOTY2N

      いや、死ねよ。何逃げてんだよクズ。

    3. キジトラさん
      2014年12月20日22:42  ID: MzU3NTA3N

      許せないんだけど、被害者なんだけど。

    4. ベテルギウス
      2015年3月2日22:30  ID: Mzc1NTMxM

      犯罪被害者が救われていない現実が犯罪者への怒りや憎しみ、司法や行政への不信感を増大させ、厳罰化や、加害者とその家族への非難・吊し上げの背景になっていると思われる。
      特に少年犯罪の場合は親の教育・監督責任が伴う為、犯行が重大であればあるほど加害者の親・家族への風当たりが強まる傾向があるようだ。
      これは『親の教育・監督責任』という視点であれば、当然起きてくる批判であろう。
      加害者の家族と被害者の家族のどちらがより不幸なのかという議論は結論が出しにくい。
      加害者のみならずその家族まで苦しみ追い詰められていくような事案は、今の日本社会の現状が変わらなければこれからも起き続けるであろう。

    5. キジトラさん
      2016年1月2日19:07  ID: NDI2MDM3M

      被害者側への対応をしっかりしてから
      次に加害者側の対応は無理なのか?
      物事には優先順位があるんじゃねえのか

    コメントする

    次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

    サイトマップ