こういう動きが日本でも広まっていくのでしょうか。恥じらいを持って隠れて考えたり行動しないといけないセックス観からの脱皮が進んでいます。
私たちが学ぶべきセックスは、ポルノからじゃない。
人々のセックス観に「革命」を起こし続けるギャロップさんにその思いを聞いた。
ARISA IDO
シンディ・ギャロップさんは2つの顔を持つ。
一つは、世界中の大企業を相手にするビジネスコンサルタント、そしてもう一つは、一般の人がセックスを閲覧できる動画サイト「Makelovenotporn」(ポルノじゃない愛あるセックス=MLNP)の創設者だ。
ポルノ動画のような演出されたセックスではなく、普通の人たちの普段の営みを動画で共有するサイトで、2009年に創設された。
60を手前にしてもなお、人々のセックス観に「革命」を起こし続ける彼女にその思いを聞いた。
KAZUHIKO KUZE
20代男性とのセックスで気づいたこと
——この動画サイトを立ち上げたきっかけはなんですか
私は、この動画サイトを作る前、よく20代の男性とセックスしていたのですが、あることに気づいたんです。セックスの最中、彼が私にしたことは、信じられないものでびっくりしました。精液を顔にかけようとしてきました。なぜ彼は、こんなセックスをしようと思ったのだろうか。他の人も同じことを思っているのではないかと思うようになりました。
セックスについてオープンに話せない社会の中で、過激なポルノサイトだけが自由にアクセスできる。そんな環境で育った若い彼らにとってアダルトビデオが自然と「性教育」になってしまうんです。
ポルノではない、現実のセックスについて語り合える場所がほしい。そんな疑問から始まったのがMLNPです。
TED / YOUTUBE
TEDで講演した際、初めて「顔面射精」と6回口にしたスピーカーになった。
——人々への性教育ではなく、一般の人々の「普通」のセックスが見られる動画サイトを立ち上げた理由はなんですか
「そんな動画サイトなんか作らないで、教育の分野に行けば?」とたくさんの人に言われました。たしかに、性教育について書いたり、講演したり、可愛らしい教育ビデオを作ったりすることもできます。しかし、私たちは人のセックスを見ることで一番性について学ぶのです。あの若い男の子は、アダルトサイトを見て学んだことを私とのセックスで実践したのでしょう。
——間違ったセックス観を植えつけているのは、ポルノサイトですか
最も問題なのは、私たちがセックスについてオープンに話さないことです。人々が大きな不安にかられる分野なのです。特に行為中は、相手を傷つけ、関係を壊す可能性のある中で、相手に声をかけるのはとても勇気のいることです。さらに、私たちは相手から好かれようともします。
みんな、セックスがうまくなりたいけど、その方法さえ知りません。私たちは、親や先生からその方法は学びません。だから、私たちはそれを語るきっかけさえ失ってしまうのです。
しかし、会話のきっかけが必要です。この会話をするための「飛び込み台」を模索しているのです。
——MLNPは、どうして「飛び込み台」になるのでしょうか
私たちは、「ソーシャルセックス」という新しい分野を開拓しています。これは、一般の人のポルノサイトではありません。FacebookやYoutubeに人々が個人的な投稿をするのと同じように、セックス動画の投稿をしています。
私たちは、一般の人のリアルな体型、髪型、ペニスを大事にします。セックスをしている人はみんな美しいのです。同時に、セックス中に起こる偶然性、気まずさ、だらしなさも大事にします。
アダルトサイトばっかり見ていると、セックスはパフォーマンスだと覚えてしまいます。「正しさ」があって、間違いをしてはいけない、と思ってしまいます。でも、現実のセックスはもっと自由ですよね。
KAZUHIKO KUZE
セックスしている際中に、母親から電話?
——例えば、どんなことが起きますか?
以前、こんな動画がありました。あるカップルがセックスしている最中に、彼女の母親から電話がかかってきました。なぜか、彼女はその電話をとってしまいました。セックスの最中に。時が止まったように、2人の体は固まっています。ポルノサイトでは出てこないシーンですが、現実世界でありえそうな話です。
そして、私たちのサイトはAV女優や男優が、演技ではなく1人の人間としてパートナーとセックスする動画をあげている唯一のサイトです。彼らも現実のセックスをしているということがよくわかります。
KAZUHIKO KUZE
——自分の性行為をネット上にあげるというのは、かなり勇気のいることです。なぜ、2000以上の動画が集まったのでしょうか。
動画をかなり厳密に審査しているので、信頼を勝ち取っているからだと思います。動画に参加する人は、全員2種類のIDを提示するようにしてもらっています。動画に出演しない人でも、カメラマンなど協力した人は全員の確認をしています。
そして、私たちのスタッフは、スカイプなどで直接彼らとコンタクトをとっています。定期的に参加者が集まれるイベントを開いたり、コミュニティとしての安心感が得られるような工夫もしています。
もちろん、匿名でも参加できます。マスクをつけたり、影で顔を隠したり、ばれないように工夫しています。半分の参加者は匿名です。「顔を見せずにセックスする方法」というブログも投稿していますよ。
ギャロップさんの革命は続く…
KAZUHIKO KUZE
——MLNPは、200万ドルの資金を調達したと聞きました。今後、セックスのことを話しやすくするためにどんな方向性を考えていますか
私は、財団を立ち上げて「セックステック」という分野全体の資金集めをしていきたいと思っています。「セックステック」は、テクノロジーによって「性」にまつわる問題を解決していくという目的があります。
MLNPを立ち上げる時、「大人向けコンテンツ」であるがゆえに、銀行からお金を借りることさえ苦労しました。この分野で起業したい人が、自由にそのアイディアを実現できるような財団があれば、さらに多くの人は「セックス」に光をあてられます。
だから、私はセックステックに20億ドルの資金集めをします。財団の立ち上げをやったことがあるって?全く!やったことはないけれど、私はやると言ったらやります。
via huffpost 私たちが学ぶべきセックスは、ポルノからじゃない
日本でも重要な取り組み
日本の性教育のレベルが世界的にもかなり低いものであることは明らかな事実です。十分な知識を与えられないまま病気が蔓延したり望まない妊娠を生む現状となっています。しかしこのような性教育の中でも最も重要なものの1つは、そのような衛生レベルの話ではなくてむしろその実態-どのように人々はセックスをしているのか-という部分ではないでしょうか。
保健の教科書がどれだけ熱心に病原菌とその蔓延について、妊娠のメカニズムとそのプロセスについて説明したところで、多くの青少年の関心はそこにはないでしょう。体から湧き上がる欲望とどのように向き合えばよいのか、相互関係の中でどのように振る舞えば良いのか、そういった具体的で実践的な情報は学校教育の中では含まれていません。明らかにこれは性教育における中心でありながら、これまで無翅されつづけてきたわけです。
そしてそれは教育が進んでいると一般に考えられている欧米ですらそうなのだということがこのニュースからわかります。若者は製品として作られたポルノを見て自らの従うべき模範として学習しているのです。性行為にもちろん厳密な型というのはありませんが、あらゆる恋愛がメロドラマのように激しくある必要がないように、セックスもまた同様だということです。もっと普通の、身近な、当たり前の、飾らない性行為について触れる機会が無いのは多くの青少年にとって-あるいは昔の青少年、今の30代40代だって-重要でしょう。
違和感もある
ただし、個人的にはこのような性行為をたくさん集めたサイトというのが日本で可能なのか、そしてそれは実効的なのかというと疑問が残るのも事実です。まず第一に自分たちの行為をわざわざ撮影してupしたいという人間があまり多いとは思えず、なによりupしたいと思うような人たちが標準的な-という言葉はおかしいかもしれないので、日常的な、よくある-性行為をしているのかは少し疑問が残るということです。
いくら一般人の性行為がたくさん集められていて参考になるとは言っても、そのようなサンプルに偏りがある性行為なのであれば必ずしも安易に一般的なものはこうなのだと考えるのは難しいような気もします。もちろん、ポルノのように利益を目的としたものではないですから敢えて過激になりすぎることもないのだとは思いますが、すぐさま参考にできるというものではないだろうなとは感じています。
こういう教育が却って子どもたちに性への関心を高めてしまうのではないかと考える向きもあるようですが、正直人生のあらゆるタイミングで性についての情報は仕入れることが可能であって、であればその最初のサンプルにまっとうなものが与えられることは凄く意味のあることでしょう。日本もポルノのカテゴリには強姦、痴漢、不倫など「最初に触れるものとしてマシ」とは思えないものがたくさんありますしね。
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