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悪質な生活保護不正受給。「人間はズルをする」ことを踏まえた制度構築が要か
2015/01/02 20:02  コメント (1)
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  • 生活保護と聞くと、不正受給。そんなイメージがすっかりついてしまいましたが、それが助長されてしまいそうなニュースが出ています。問題なのは人間か、それとも制度なのでしょうか。

     



    複数の自治体から生活保護費を不正に受給していたとして、詐欺などの罪に問われた無職春日野美保被告(48)に、静岡地裁は16日、懲役3年(求刑懲役4年)の判決を言い渡した。

     判決理由で大村陽一裁判官は「自治体間で情報共有がされていない生活保護制度の盲点を突いた、制度の根幹を揺るがしかねない悪質な犯行」と指摘。その上で「住居を転々とする中で順次、保護費を受け取っており、高度な計画性はなかった」と述べた。

     判決によると、春日野被告は、東京都三鷹市から生活保護費を受給していたにもかかわらず、2012年12月から今年1月にかけ神奈川県の藤沢、相模原、川崎各市から計約270万円の生活保護費をだまし取った。

     静岡県警によると、春日野被告は、静岡市内の百貨店で衣類を盗んだとして窃盗容疑で今年1月に逮捕され、その後の調べで保護費の不正受給が分かった。三鷹市を含む都内の5自治体も被害届を出している。

    via: 生活保護不正受給の女に懲役3年 270万円だまし取り「悪質な犯行」

     

    情報整理

    さて、まずはニュースの内容を整理してみましょう。複数の自治体から生活保護費を不正受給したとされる日野被告。もちろん行為自体も問題なのですが、このニュースがとりわけ意味を持っているのは制度上の問題が浮き彫りになっているからと言えそうです。

     

    被告は複数の市を跨いで住居を転々とする中で保護費を受け取っていたとのことです。更に他の情報では、住所すらない状態だと「住居ならびに当座の生活費」を渡す自治体もあるようで、このような悪用につながってしまったようです。

     

    制度の問題点

    さて、具体的な制度の問題点というのはどういうものなのでしょうか。ここで勘違いしないでほしいのは、決して「住所を持たないやつに生活保護を受けさせるな」という主張をしたいわけではないことです。むしろ、もはや住むところもないレベルまで生活レベルが落ちているような人にこそ、このような政府が提供するセーフティネットは機能するべきだからです。

     

    ここで問題になっているのは、自治体間での情報共有がなされていなかったというところなんですね。他のところでもらっているのに他のところでもらえてしまっているのは、その情報が共有されていなかったことが原因だからです。

     

    しかし、とはいえこれには理由もあります。生活保護のような極めて重要な個人情報をどの程度まで共有するかというのはデリケートな問題だからです。

     

    これは生活保護に限った話ではありません。医療保険と国民番号制度の関係でもありましたが、医師会が統合に反対しているのは「医療データ」が一元管理されてしまうことへの不安感とのこと。(筆者にはあまりイメージができていませんが)そのような懸念もあるように、個人情報の管理、共有の範囲というのは中々難しい問題なんですね。

     

    人間と制度の関係について

    さて、少し話は変わりますが組織や制度と人間の関係というのはどのようなものが望ましいのでしょうか。とりわけ生活保護のように「ただ乗り」が存在すると全体の不利益になるようなサービスについては、このことについて考えることが重要でしょう。

     

    一般に「性善説」「性悪説」といった二つの立場があるとも言えますが、基本的にこういう制度は「人間はズルをしてしまうものである」という前提で考えることが必要です。しかし、「素直に全ての情報を出せば受給資格がある人間」をも排除しないように気をつけなくてはなりません。

     

    ヒューマンエラーという考え方にも似ています。要するに様々なシステム構築において、「そもそも人間はミスを犯すものである」という前提に立って、ミスをあまりしないように、あるいはミスをしても修正が効くように、システムを構築する考え方がありますが、同じことでしょう。

     

    生活保護に当てはめるなら「不正受給しようとする人はいる」「不正受給かどうかの判断は受給開始の前後両方で行う」「不正受給だとわかったら止めることができるようにする」といったところでしょうか。

     

    生活保護にあてはめて考える

    さて、上記の考えをきちんと生活保護に適用してみると、以下のような考えが出てくるのではないでしょうか。前提としては、「不正受給の数を減らす」「本当に必要な人の申請を拒否しない」というのが目的です。

     

    すると、まず「本当に必要な人の申請を許可しない」ためには、出来るだけ門戸は広げておいたほうが良いでしょう。厳密な基準を設けるとそれから漏れてしまう人が必ず出てきますから。

     

    次に行うべきは、受給スタートしてからの「改めての調査」です。これが今回の事件ではあまりなされていなかったようです。受給をしてからの生活をきちんとチェックすることで、今回のような事件は防げたのではないでしょうか。

     

    まとめ

    さて、このような事件でまたしても国民の生活保護に対する心証が悪くなることは非常に残念です。というのも、昔友人で生活保護を受けなくてはどうにもならないレベルだったのに、その年に大きな「生活保護不正受給問題」が発生して「水際戦略」なる許しがたい行為が横行した時に、生活保護の受給が出来なかったことがあったのです。

     

    筆者はそれを身近に見ていたため、「入口を狭める」方向に対してのアプローチは極めて懐疑的なのです。それよりも事後のチェックで見ていかなくてはなりません。コストはかかるかもしれませんが、それは「制度本来の目的」を果たすための必要なものでしょう。

     

    セーフティネットのない社会に戻るのは恐ろしいことです。どうか制度がよりよいものとなり、不正受給者が減り、本当に必要な人にきちんと資金が回るようにと願っています。

     

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    カテゴリー 生活保護 生活保護 芦山悠太

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    1. キジトラさん
      2015年1月2日22:33  ID: NzM2OTU2M

      そうですね。生活保護の制度は必要だし素晴らしいものだと思いますが、
      このような不正受給という話が一人歩きして制度自体を否定しまう人が多いのは悲しいことです。

      精度の欠陥は直さなくてはいけません。
      でもその欠陥を直すのに反対する人たちがいることも事実です。
      人権だとかプライバシーという名において抵抗する。
      実はこのような人たちが諸悪の根源なんじゃないかと思ったりします。

      私は根本的に制度を改革するべきだと考えています。
      年金制度と一緒に改革して生活保護は年金制度と合併させる、という考えです。
      まあこの話しは長くなるのでこの辺で(笑)

      あ、あけましておめでとうございます。
      今年もタラタラコメすると思いまが暖かい目で見てやってください。

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